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写真で村の魅力を伝えたい!自己表現のツールから、課題解決のツールへ。

2023.06.28

加藤愛子さん

高知県日高村地域おこし協力隊2年目(2023年7月現在)。愛知県生まれ。JICA海外協力隊、「NPO法人ムラのミライ』で国際協力を行っていた。新型コロナウイルス流行によって、海外プロジェクトが中止されたことをきっかけに、地域おこし協力隊に着任。


Q:移住する前はどのような仕事をしていましたか?
A:JICA海外協力隊として国際協力や、ヨガインストラクターなどをしていました。

大学を卒業した後、商社の貿易事務としてタイへの輸出を担当したりJICA海外協力隊でスリランカで環境教育や清掃員の労働環境改善に取り組んだり、前職では『NPO法人ムラのミライ』という国際協力団体で働いていました。

国際協力に興味を持ったのは、中学の英語の教科書にモザンビークで地雷撤去をしている国境なき医師団の方のお話が載っていて、「世界で困っている方を支援できる仕事があるんだ」と思ったことがきっかけでした。

その後、大学では開発経済学のゼミに入り開発途上国について学びました。でもよく「1日1ドル以下で暮らす=貧困」という文言を目にして、疑問に思っていたんです。

1ドルっていう基準は誰の目線で決めたのか。都市部や田舎では生活が違うし、そもそも伝統的な自給自足生活をしている人は1ドル以下でも豊かな生活をしているのではないかと。教室で本を読んで学ぶだけでなく自分が一度、開発途上国と呼ばれる国で生活して見てみたいと思い、1年間休学してインドに留学しました。

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そこで当時南インドの山岳少数民族が暮らす農村でプロジェクトをしていたNPO法人ムラのミライ(旧ソムニ-ド)に出会い、スタディツアーに参加させていただきました。そこからのご縁で前職ではスタッフとして一緒にお仕事させていただきました。農業プロジェクトをしていたセネガルに3ヶ月間滞在し広報や記録用の写真を撮影したり、フィールドでの対話型ファシリテーション研修の運営に携わっていました。

あと実は、JICA海外協力隊から帰った直後に、ひどい椎間板ヘルニアになってしまい腰から足先までの痛みと痺れで5分の運転もままならい状態になってしまいました。そんな絶望の中、さらに学びたいと思っていたヨガやアーユルヴェーダ医師の先生がインドから来日して講師養成講座をすると聞いたんです。

体の養生も兼ねて受講し、自分の身体の変化や学ぶことが楽しくて全米ヨガアライアンスRYT500まで取得しました。なので、コロナ前はヨガインストラクターやアーユルヴェーダセラピストとしても働いていました。手術はしていませんが、ヨガでヘルニアを完治させることができました。

Q:田舎へ移住することを考え始めたきっかけはありますか?
A:高知に移住をした友人のところに遊びに来たのがきっかけ。

『NPO法人ムラのミライ』では国内外でプロジェクトをするときに、住民の方への現状把握・課題分析・行動変容を促す対話手法(メタファシリテーション)を学んでいました。学んだことを、実際に海外で使い経験を積みたかったのですが、新型コロナウイスルが流行ってそのプロジェクトがなくなってしまったのです。

国内でも実践できるところはないかなと思いつつ、仲のいい友人が移住していた佐川町に遊びに初めて高知を訪れました。空港から出たときの湿度を含んだ夏の空気、活気ある市場、大自然、そしてフレンドリーな地元の方が今まで訪れていた大好きな海外の雰囲気と重なって見えたんです。

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今まで海外にばかり目を向けていたけど、日本にもまだ知らない魅力的で好奇心を掻き立てられる場所があるんだと。そこから、移住を考え始めました。

Q:なぜ日高村の地域おこし協力隊になろうと思ったのですか?
A:日高村役場の地域おこし協力隊担当の方が柔軟に対応してくださった。

まずは、友達がいる佐川町周辺でいくつか地域おこし協力隊の募集を調べたり、担当の方に会いにいきました。その中で、多くの市町村は農業とか林業とか決まったミッションのところが多かったのですが、日高村はフリーミッションというのがあったんです。

日高村の担当の方に今までこんな事をやってきて、こんなことをしてみたい・こんなことならできるとお話したところ、日高村が取り組もうとしている「村まるごとデジタル化事業」というのがあると教えてもらったんです。

そこで、村の方の携帯電話に関するお困りごとを聞きとって事業に反映させる人が必要だと。それならメタファシリテーションを使って経験を積みつつ、村のお役にも立てるんじゃないかと思い日高村の地域おこし協力隊に応募しました。

Q:着任してからどのような活動をしていますか?
A:好きだった写真を生かして、写真展などを企画してます。

まずは「スマホよろず相談所」に行かせてもらって、スマホの相談や使い方を習いに来た方にお困り事など聞いていたのですが、なかなかうまくいかなかったんです。というのは、スマホに苦手意識を持っている方に、スマホの話題ばかりしてもそりゃ話が広がらないですよね。

なので、スマホはいったん置いておいて、そもそも村の方のこれまでと今の生活を教えてもらいたいなと思ったんです。そのうえで何かスマホが解決できる生活のお困り事があるのかを知りたいと思って。でも高齢の方に過去の話を聞くと、長い人生の中のできごとのため時系列がいったりきたりしたり、移住したての私が知らない地名が出てきたりと難しかったんです。

そこで思いついたのは、趣味の写真を絡めた日高村の“今昔写真展”を企画して来場された方にいろいろお話を聞こうと。村の方から村の出来事や生活にまつわる古い写真をお借りして、役場の1階に展示しました。

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皆さん、写真があると当時の事を思い出しやすく、私にとってもイメージしやすいしピンポイントで聞きやすかったんです。なにより、懐かしいと喜んでくれてたくさんお話を聞かせてくれました。最初、写真に対する説明は、ほとんどつけていませんでした。

実際に古すぎたり、写真の持ち主さんも知らなかったりしたこともあったのですが、移住してまだ半年だった私が知ってることよりも、村の方から教えてもらったことの方がリアルで楽しいと思ったので(笑)

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村の方から聞いた情報や記憶を紙に書いて貼り足していく、みんなに育ててもらう写真展にしました。知らないことが書かれてて地元の若い世代の方や移住者がみても面白いかなと思って。その後、写真データや聞いた情報はまとめて、村の資料として保存してただきました。

第二弾として現在の日高村の暮らしをテーマにした写真展を2022年10月に行いました。そんなこんなしているうちにスマホよりも写真のイメージが付いて、今はそっちをメインに活動しています。

今年は7月に日高村で活躍する地域おこし協力隊を紹介するパネル展とイベントを企画しています。これまでの写真展を開催した際に「地域おこし協力隊って何人いるの?何してるの?誰がいるの?」と聞かれることが多々あって。

個性豊かな隊員仲間が17名(2023年7月現在)もいるのに、交流の機会が少ないのはもったいないと思って企画しちゃいました。いろんな意見やアイデアの科学反応の場になったら良いなと思いまして。

Q:写真を始めたきっかけはなんですか?
A:海外に行くタイミングでカメラを買ったのがきっかけ。

大学生の時に海外に出かけるようになって、旅先で出会った景色や人を撮って、日本に帰ってきてからも周りのひとに伝えたいと思ったんですよね。それで、インド留学に行く前にPENTAXの一眼レフを買ったのがきっかけでした。

でもインドに着いてすぐに調子が悪くなりオートモードしか使えなかったのですが、カメラで撮ること自体が撮ってる感があって楽しくて。持ってたのが白いボディのカメラだったので、珍しいみたいで旅先で話しかけられるのが嬉しくていつも持ち歩いてました。

日本に帰ってきてしばらくカメラを使ってなかったのですが、JICA海外協力隊に行くタイミングでまたカメラを買いかえました。NIKONの一眼レフとFUJIFILMのミラーレス一眼レフだったのですが、軽量なのと写りが好きでFUJIFILMばかり使っていました。

ちょうどスリランカにいた時に大好きな旅雑誌TRANSITのスリランカ特集が発売され、取り寄せて読んだんです。写真家さんがフィルムカメラで撮ったスリランカが優しくレトロで、私が見ていたスリランカのイメージにぴったりで「私もこんな風に撮りたい!」と思ったんです。

そこでスリランカに遊びに来る予定だった母に頼んで、とりあえず写ルンですを3つ持ってきてもらいました。帰国後、現像してみるとやっぱり感動するくらい好きな風合いの写りで。さらに、撮ったときには見られない、時間をおいてから見られるタイムカプセルのような感覚で思い出が蘇るのも好きでどんどんハマっていきました。

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そんな話を祖父にすると、70年前新婚旅行に行く前に買った大事な二眼レフを出してきてくれて、くれるというのです。嬉しくて、近所のカメラやさんに行ってはフィルムの入れ方や使い方を教えてもらって何度も失敗しながら覚えました。最初はそのカメラで祖父母や家族を撮っていました。

まさかそのカメラを使って、日高村の写真を撮って展示をする機会をもらえるなんて、本当に嬉しいですよね。

Q:写真の好きなところを教えてください
A:写真を通して、自分の知らない世界を見れる。

カメラを持っていると世界を違った角度から見ることができる。足を止めていいところを見つけるのが上手になる。そして、写真を通して自分の知らない景色や人と出会い、自分自身が知るだけでなく人に伝えられることが楽しいです。

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Q:日高村の好きなところを教えてください。
A:自然と一緒に生きていく豊かな生活と、愉快な村の人たち。

旬のおいしい食べ物、森の香りが濃いこと、朝鳥や虫の声で目を覚ませること、なにより元気で愉快な村の人達。生活に大事な”食”を調達する手段がたくさんあることってすごく豊かだと思うんです。

都会だとお金で買うのが主流ですが、ここなら自分で育てる、交換する、いただくなど他にも手段がある。なにより、新鮮で美味しい野菜が手軽に手に入るのが嬉しいですね。そして、野菜を作ったり、イノシシや魚を獲ったり、日曜大工したり、何でも自分で作ってしまう地元の方から生きる技術を学べることが楽しいです。

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すでに誰かが作ったものを買うのではなく、都会のようなサービスが少ないからこそ、自分でやってみる・作ってみる。よりクリエイティブになれて新しい発見があります。地元の人にとっては当たり前のことでも、私達からはキラキラ見える。そんな日常の中の発見を地元の方にも伝えて、日高村の良さを再発見するお手伝いができたらと思います。

Q:最後に今後どのような活動を行っていきたいか教えてください
A:今までは自己表現のツールだった写真で、地域の課題解決をしていきたい。

日高村のふるさと納税サイトに用の写真を撮る機会を頂いたことがあって、村外の方にも写真を通じて日高村のことや生産者さんのことを知ってもらうお手伝いができるのが嬉しかったです。そして、写真を変えてから売上が伸びたと生産者さんに喜んでもらえたこともすごくやりがいを感じました。

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写真は自己表現のツールと思っていたけど、他の方の課題解決にもなるんだと実感できたんです。なので、これからも村の魅力を伝える写真を撮りつつ、食べ物、建物、人、風景とこれまで自分が撮ってこなかったものでも撮れるように撮影技術を上げていきたいです。

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