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「森のようちえん」 立ち上げに向けて活動中! 子どもの心を育てる自然体験を。

2024.05.21

主に地域おこし協力隊(※以下、協力隊と記載します)の活動を綴る、移住した人シリーズ。

移住した人ってどんな生活をしているの?
協力隊ってどんな想いで活動しているの?
そんな移住に興味があるあなたへ、移住者のビフォーアフターをご紹介する記事です。

今回は、奥さんの生まれ育った土地で子育てをしたいと、
静岡県から高知県いの町へ移住された辻さんにお話を伺いました。

(※)地域おこし協力隊とは、都会から地方に住民票を移し、地場産品の開発や地域活動への協力を行いながら、地域への定住を図る取組です。任期はおおむね1年から3年です。詳しくはコチラ

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辻 祥悟(つじ しょうご)

いの町地域おこし協力隊4年目(2024年5月現在)。神奈川県出身。
森と木に関わるスペシャリストを育成する専門学校である「岐阜県立森林文化アカデミー」に入学し、森林環境教育を専攻。卒業後は、内閣総理大臣賞も受賞した経験のある静岡県の「NPO法人しずおか環境教育研究会」に就職。里山を活用した体験イベントなどを実施してきた。
「妻の生まれ育った高知の豊かな風土で子育てをしたい」という想いから、2020年1月に高知県へ移住。現在は、子どもの笑い声が響く地域づくりを目指して活動中である。

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内容のきまっていない自由なキャンプ
大人も子どもも、自分で考えて挑戦する!

———辻さんは現在どんな活動をしていますか?

辻さん:主にキャンプやプレーパーク(※)といった、子ども向けの自然体験を企画しています。
キャンプは、子どもだけで参加できる企画から、親子で参加できるものもあります。

(※)プレーパークは、「冒険遊び場」とも呼ばれます。遊具のある普通の公園とは違い、子どもがやりたいことに挑戦できるよう、なるべく禁止事項をなくした自由な遊び場です。

———そのキャンプでは、どんな体験ができるんですか?

辻さん:川へ飛び込んだり、いかだを作って魚釣りをしたり、竹を切って工作をしたり……。企画によって変わりますが、基本的には参加者の「やりたい!」をその場で聞いて、体験内容を決めています。

プログラムを自由に組み立てていくことが多いですね。

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———その場で内容を決めていくんですね!そんなスタイルがあるなんて初めて聞きました。

辻さん:環境教育の現場では、「非構成のプログラム」なんて呼ばれています。

事前に用意された体験をこなすわけではなく、自分たちがやりたいことを考え、どうすれば実現できるか工夫し、挑戦する。その一連のプロセスを通して、子どもたちには「自分で考えて行動できる力」を身に付けて欲しいと思っています。

———自分で考えて行動することって、生きていく上では大事なことですね。どうして、子どもたちにその力をつけてほしいと思うようになったんですか?

辻さん:野外教育の現場に携わってきた経験からですね。大人がすぐに答えを教えてしまい、子どもたちが主体的に考えて行動する機会を奪ってしまうことが多々あるな、と感じていたんです。

例えば、マッチで火をおこしてもらう時、大抵の場合マッチの使い方や焚き木の組み方など、「火を着ける方法」を教えるのではないかと思います。

ただ、それだと「火の着け方」は分かるけど、子どもたちが考えて工夫する機会は生まれません。なので、私の活動では、なるべく手出し口出しせず、子どもが考えて火をつけていく様子を見守るようにしています。

———答えを教えるわけではなく、自分で解決策を考えてもらうわけですね。

辻さん:そうなんです!

あるイベントでは、マッチの火がすぐに消えてしまい、火おこしに苦戦している小1の女の子がいました。何度もマッチの火をつけては消えるを繰り返していた時、「どうして火が消えると思う?」と聞きました。

すると、おもむろに新聞紙でかまくらのような風よけを作り、その中にマッチを投げ込み、見事に火をつけることができました。手で風よけを作ることを先に教えてしまうと、このような発想は生まれてこなかったと思います。

この成功体験が自信になって、その子の成長につながっていけばいいなと思っています。

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素直なコミュニケーションを大切に
自分の気持ちや相手の気持ちを考える場にしたい

———その他に、キャンプで大事にしていることはありますか?

辻さん:参加者、スタッフ共に「素直なコミュニケーションを取ること」ですね!

キャンプの活動を始める時は、まず自分のやりたいことを発表してもらって、その日の過ごし方を皆で相談します。まだやりたいことがきまっていない時は、魚釣りや虫取りなどを提案することもあるし、やりたいことが見つかるまで何もしないことも……(笑)。

常に、その子の気持ちに寄り添えるように気を付けていますね。

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———たくさんの参加者がいる中で、全員の「やりたい」ができないことってありますか?

辻さん:もちろん、参加者全員の希望を叶えることは難しいです。

たとえば、川遊びへ行きたい、木工や火おこしがしたいなど、希望がいくつかに分かれると、スタッフの数が足りず、全員の希望を同時には叶えられません。道具が1つなのに、やりたい子が3人いるとか。

大切なのは、その時にどう話し合って、「みんなが納得できる方法が見つかるか」、だと思っています。

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「非構成のプログラム」では、しばしばこういった自分や相手の気持ちと向き合う場面があります。ちょっとした小競り合いの時とかも。

素直なコミュニケーションは、そういった気持ちに向き合いながら、他者と関わることだと思います。そうしてより良いアイデアが出たり、誰かが我慢したり、気持ちの折り合いをつけることを経験していきます。

これって、大人がその場をすぐに納めてしまうと、子どもの心が揺れ動く大切な過程が省かれてしまうんですよね。

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幼児期に心揺れ動く経験を!
高知にはまだ少ない、「森のようちえん」を作りたい

———辻さんの今の目標を教えてください。

辻さん:いの町で「森のようちえん」を始めることです。

「森のようちえん」は北欧諸国で始まったとされ、自然体験を軸にした子育てや幼少期教育の総称です。認可幼稚園だけでなく、子育てを地域レベルで支援する子育てサロンなど、様々な形態があります。

近年、幼児の自然体験活動の欠如が指摘されており、子どもたちへ自然体験の機会を提供しようと活動する団体や個人が増えてきています。この考え方は世界中だけでなく、日本全国にも広がってきています。
「森のようちえん」についてはコチラ

「森のようちえん」の活動範囲は、海、川、野山、畑、都市公園など様々です。

その中でも、私はいの町の里山をフィールドにしたいと考えています。縁があって活動拠点が出来そうなので、現在は子どもたちが目いっぱい遊べるようなフィールドを整備しているところです。

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———なぜ、「森のようちえん」を作ろうと思ったんですか?

辻さん:「幼児期」に心が揺れ動く体験がたくさんできる場所を作りたいと思ったからです。

きっかけは、「森のようちえん」の活動をしている「よみたん自然学校」という団体にインターンシップに行ったとき、一人の女の子(4歳)に出会ったことでした。

ある日、急にミミズ掘り大会が始まって、その子はスコップでミミズを掘り上げ、「みみじゅ、可愛いな〜。飼いたいな〜。うちにはお姉ちゃんしかいないから寂しいの」って言ったんです。当時の自分は、女の子はミミズが苦手なものだと思っていて、なんでこの子はそういう概念が無いんだろうって結構衝撃を受けて……(笑)。

そのことがきっかけで、好きとか嫌いとか、子どもの価値観ってどうやって生まれてくるんだろうって疑問にもつようになりました。

それから様々な年齢の子と関わっていく中で、「『幼児期』っていうのが人格形成の土台を成すうえで重要なんだ!」って、感じるようになって。そこから、幼児期をターゲットにした「森のようちえん」の活動に関心を持つようになりました。

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———だから「幼児期」なんですね!その中でも、辻さんが自然体験にこだわっている理由はありますか?

辻さん:子どもの心が揺れ動く体験であれば、自然体験でなくてもいいと思っています。

ただ、自分の場合はそのための手段が「自然体験」だったということ。日々変化する環境の中で、多様な生き物とふれて、身体をめいっぱい使って遊ぶ。単純に自然の中だとワクワク、ドキドキの機会が多いし、何より自分自身もとっても楽しいんです!(笑)

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毎日のように漁をして鮎を食べられる
子どもを育てるのにぴったりの場所

———最後に、プライベートの生活の様子を教えてください!

辻さん:夏には主に鮎釣りをしていますね。しゃくり漁という伝統的な漁法です。

通常の釣りと違って針に餌はつけず、水中の魚影を見ながら竿を操り、アユをひっかけます。仁淀川の支流近くに住んでいるからこそできる生活だと思っています。

早朝から川に行って、びしょびしょで家に帰って、お風呂に入ってから出勤することもあります(笑)。夜には、子どもと庭に寝転がって、流れ星を探すことも。都会では考えられない生活です。

子どもは自然の中で育てたいと夫婦で話していたので、とても充実した楽しい毎日です。

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———ご飯は地元のものが多いですか?

辻さん:そうですね!高知には知らない食材が多いので、とても驚かされます。

イタドリ、りゅうきゅう、チャーテ、ぬたなど、地元の食材や料理を楽しんでいますよ。

———移住に興味がある人に向けてメッセージをお願いします。

辻さん:移住する上では、良い面もありますが、もちろん大変な事もあります。

虫が苦手な人には、まずココ(いの町吾北地区)は難しいかもしれませんね(笑)。

田舎暮らしの理想だけを求めて田舎に来たら、現実とのギャップに悩み都会に戻る人なんかもいます。
色々見たうえで、ゆっくりと検討すればいいと思います!

辻さんのインスタグラムはコチラ

<ライター/いの町地域おこし協力隊 浮木>

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