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生まれ故郷・日高村で働く外国人に向けて日本語教室開講中!日本を好きになってもらうために。

2023.06.28

ケルビー咲野

高知県日高村地域おこし協力隊1年目(2023年7月現在)。日高村生まれ。大学時代にジョンさんと出会い結婚し11年間スコットランドで暮らしていたが、自然が豊かな環境で子育てをするために帰国。2022年8月に日高村の地域おこし協力隊として着任し、ジョンさんとともにクラフトビール醸造所の設立を目指しながら、村内に住む外国人就労者を対象にした日本語教室を運営中。

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Q:スコットランドから日高村に帰ってこようと思ったきっかけは何ですか?
A:夫が「日高村で子育てをしたい」と言ってくれたのがきっかけ。

いつかは地元の日高村に帰ってきたいとは思っていたんです。それがこのタイミングになったのは、ジョンが「日高村で子育てをしたい」と言ってくれたのがきっかけでした。

2018年の年末年始に7カ月の長女を連れて日高村に帰省した時のことです。私にとってはいつもの年末年始を過ごしただけだったんですけど…

子どもと一緒に自然の中をゆったりと散歩をしたり、年末になるとそばを食べたり、お正月になると家族親戚が大勢集まって、皿鉢を囲んで食べてお酒を呑む。

どれもジョンの肌に合っていたみたいで、気に入ってくれたんです。特に、親戚兄弟が少ないジョンとは対照的に、私は4人兄弟の長女で親戚も多いことに、とても感銘を受けてましたね(笑)

こんなに家族が身近にいて、自然が豊かな環境で子育てができたらいいなと、2人で話し合って日高村に帰って来ることにしたんです。

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Q:地域おこし協力隊としてのUターンを選んだ理由を教えてください。
A:役場の方に提案していただいて。

日本での仕事について2人で話し合った時に、ジョンの昔からの夢だった「クラフトビール作りに挑戦したいね」という話になったんです。ジョンがお酒が好きなのはもちろん、私もお酒は大好きで、若い時はたくさん飲んでいたし、ジョンの夢を一緒に応援しようと思いました。

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ビールの醸造所を日高村に作りたいということを、役場の方に相談をしたところ、地域おこし協力隊としてクラフトビール醸造所の立ち上げ準備をしていくことを提案していただいたんです。

しかも、コロナ禍でなかなか日本に帰ることができない状態での仕事探しは大変だろうからと、ジョンだけでなく夫婦で地域おこし協力隊になることを提案してくださいました。

私たちにとったら、とてもありがたいお話しだったので、地域おこし協力隊として日高村に戻ることにしたんです。

Q:実際に日高村ではどのような活動をしていますか?
A:ジョンと一緒にブルワリーの準備をしながら、外国人就労者の支援や日本語教室を行っています。

私のもう一つのミッションは日高村や村周辺で働いている外国人就労者の支援です。
村内にも大規模ミニトマト栽培を行っているイチネン日高村農園さんや、全国の芋けんぴのシェア率50%を占めている澁谷食品さんなど大きな会社があり、そこでは外国から来た方たちも働いています。

しかし私が日高村で活動を始めた時点では、何人の外国人が、どこの国から来て、どのような生活を送っているのか村の人にはほとんど知られていませんでした。そのため、帰ってきたばかりの時は情報収集から始めました。

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調べて見えてきたのは、彼ら・彼女らは働きながら日本語の勉強をしていること。行動範囲は家と職場の往復と、生活必需品を買うスーパー程度とかなり狭いこと。村民と交流する機会はほとんどないこと。あと、日本語を勉強しても、土佐弁が理解できず困ることがあること。と、様々な現状が見えてきました。

2023年4月にイチネン日高村農園さんと澁谷食品さんとの協働作業の末、ヒアリングをしていく中でニーズがありそうだった日本語教室を開講しました。教室では村内の医療機関の説明から、日常会話、日本語能力試験対策まで幅広く教えています。


Q:日高村でなぜ外国人労働者の支援をしたいと思ったのですか?
A:せっかく日本を選んでくれたんだから、日本を好きになってほしい。

スコットランドの大学で10年近く日本語を教えていたこともあり、その経験を活かすことができるかなという気持ちがあったのはもちろんですが、1番大きな理由は私自身がスコットランドでたくさんの人に助けてもらったから。

やっぱり異国の地で、ジョン以外の友達も知り合いも家族もいない所に住むとなると、どうしても困ることや寂しいことってありました。でも、そういう時はいつも助けてくれる優しいスコットランドの人たちがいたんです。だから私はスコットランドのことも、スコットランドの人も大好きになれた。

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だからこれは外国人の私に優しくしてもらった分の恩返しのつもりです。もし日本で日本語がわからない方が困っているなら助けたい。せっかく日本を選んで、日本に来てくれた外国の方たちには、やっぱり日本のことを好きになって欲しいんです。


Q:海外での生活と日高村の生活どちらも知っている咲野さんだから思う、外国人が日高村での生活で困ることは何だと思いますか?
A:ヴィーガンへの理解がもっと広まると良いなと思います。

ヴィーガンへの理解がまだまだ浸透していないことかなと思います。ジョンがヴィ―ガンで、私たちも可能な限りヴィ―ガン食を選んでいますが、レストランではもちろん、普通に売っているお菓子やお弁当でもヴィーガン対応のものを探すのは大変なんです。

でも、海外だとヴィーガンという考え方はもう選択肢の一つとして受け入れられているとこが多くて。例えば、レストランに行っても普通のメニュー、ヴィーガン用のメニュー、グルテンフリー用のメニューと3種類くらいあるのが当たり前だったり、保育園でもヴィーガン対応をしてくれたりします。

まだ日本では、そこまで浸透していないので「ヴィーガンとは?」という考え方の説明からしなきゃいけないことも多いんです。そうなると、外国のヴィーガンの方は困ることが多いのではないかと思います。

でも最近日高村では大きな動きがあり、元地域おこし協力隊の松倉さん主導で、日高村村内の飲食店に呼びかけ、ヴィーガン用のメニューの開発を進められているんです。これをきっかけに少しでも村民にヴィーガンという考え方があるということを、知っていただけたら嬉しいなと思います。

Q:日高村の好きなところを教えてください。
A:帰ってきたことを喜んでくれる人たち。

「よう帰ってきたにゃぁ」と、喜んでくれる人がいる。「もう慣れたかえ」と、家族を気にかけてくれる人がいる。「まぁ、まっことかわいらしいねぇ」と、移住犬にも声をかけてくれる人がいる。そんなところが好きですね。

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Q:最後に今後どのような活動を行っていきたいか教えてください!
A:高知県の日本語教育を盛り上げていける活動に着手しています。

まず、村内の日本語教室はできる範囲で続けていきたいと思います。もう一つ考えているのが、高知の土地文化や歴史、人物、伝承を題材にした日本語多読用読み物の作成。これも日高村での教室を運営する中で、村に住む外国人があまりにも村や高知のことを知らないということに気づいたのがきっかけです。村のいたるところに「もへいくん」がいるのに、「だれですか?」状態(笑)めだか池の存在も知らなかったり。

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一方で、事業所さんには「この村に来てよかったと思ってもらいたい」という想いがあります。それを何とか、外国人自らが「読みたい」「知りたい」と思える形で情報発信できないかと思い、多読用の読み物として無料でネット公開できるよう、今企画しています。

このプロジェクトには、日高村地域おこし協力隊で写真を撮る加藤愛子さん、イラストを描く村上由佳さんや、マンガやイラストを学ぶ高校生や学生さん、高知県、地域で活躍する日本語教師の皆さんなど、多くの人に関わっていただきたいです。そうすることで、よりおもしろいものになる気がしています。

高知の皆さんには、地域に住む外国人や、日本語という言語に、もっと興味を持ってほしいですね。

ケルビー咲野さんが活動中のフリーミッション協力隊についてはこちらから

写真:日高村地域おこし協力隊 加藤愛子
ケルビー咲野さん提供

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