ドローンによる物流を実現するため活動中!ドローンを村の新たなインフラに。
2022.10.12
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祖父にお下がりのパソコンをもらったのが
ハマったきっかけだった。
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田邊圭祐さん
カナダの大学でロボット工学・プログラミングを学ぶも、コロナをきっかけに帰国。2022年1月に高知県日高村地域おこし協力隊に着任し、現在、ドローンによる物流という新しいサービスの立ち上げに向けて活動中。
Q:地域おこし協力隊になる前は何をされていましたか?
A:ドローンやプログラミングの勉強をしていました。
地域おこし協力隊になる前は、カナダの大学でロボット工学とプログラミングを学んでいました。
でもカナダの大学に通い始めて2年目の時に、コロナが流行り始めて、街が完全にロックダウンになり全く外に出られなくなってしまったんです。家にずっとこもっていて暇だったので、なんとなくドローンを自分で作ってみようと思いたって、作ったりしていました(笑)
最初はドローンが作れるキットを買って作ったんです。でもそれだと部品が全部揃っていて、説明書通りに組み立てるだけで、せっかく自分でドローンを作ってみたのに、仕組みもいまいち分からないし、何も勉強しなくても完成しちゃうのが物足りなくて。
2回目はドローンはどんな部品が必要で、どういう仕組みで動いているのかというのを勉強して、自分で部品を買い集めて完成させました。それがすごく楽しくて、こもっている間は、ずっとドローンやプログラミングについて勉強をしていましたね。
Q:プログラミングなどに興味を持ち始めたきっかけは何ですか?
A:祖父にお下がりのパソコンをもらったこと。
きっと子どもの頃の経験が大きかったと思います。
私の祖父は画像や動画の編集が好きだったので、最新のパソコンに買い替えたりすることも多くて。そのタイミングで古いパソコンが、私にお下がりでまわってくるんですよ。
小学生の頃に自分だけが自由に使えるパソコンを手に入れて、かなりハマっていました。ゲームをしたり、海外の映画やドラマをみたり、中学生になると、分解して部品を改造してみたりして遊んでいましたね。
こんなふうに子どもの頃からコンピュータがかなり身近だったので、自然とプログラミングに興味を持ち高校も情報系の学校に進学してプログラミングの基礎を勉強しました。
Q:協力隊になったきっかけはなんですか?
A:田舎で英語を活かせる仕事ができそうだった。
先ほどもお話したように、カナダの大学に通い始めて2年目の時に、コロナが流行り始めて、街は完全にロックダウン状態でした。当初はカナダの大学に4年間通う予定でしたが、通い続けることが難しくなってしまったので、2年で日本に帰ることになったんです。
日本に帰ってきてから、何をしようかなと考えているときに、なんとなく都会にいるより、田舎で暮らしたいなという気持ちがあったんです。田舎でできる仕事を調べていたら地域おこし協力隊という制度があることを知ったのがきっかけですね。
地域に移住をして、3年間の任期の中で、何かしらのミッションをする。「なんだか、協力隊面白そう!」って、最初は地域おこし協力隊という制度自体に興味を持ちました。実際にはどんな活動をしている人がいるのか、全国の地域にどんなミッションがあるのかを調べていったんです。
その中で英語が活かせるミッションがあると知って、本格的に地域おこし協力隊になることを考え始めました。
Q:全国で募集されている中で、日高村を選んだのはなぜですか?
A:自由度が高く、自分のしたいことが実現できそうだった。
日高村以外の自治体で、英語を活かせるミッションはほとんど観光系だったんです。例えば、外国人向けツアーを考えたり、海外に向けてのSNSでの発信とか。英語を活かすことはできるけど、1日2日で観光地を回るツアーでは、日本の文化も歴史も生活も伝えられることがどうしても限られてしまう。それに単発的な関係しか築くことができないなと思って、どうしても観光系はしっくりこなかったんです。
そんな時に日高村のひだか和紙の海外への販路拡大というミッションを見つけたんです。
ひだか和紙は最新の技術で“世界一薄い和紙”を漉(す)いていて、ヨーロッパの美術品の修復にも使用されていることを初めて知りました。日本で昔から作られている和紙の歴史とともに、ひだか和紙の技術を伝えて、海外の人々と新たな関係を築き、販路を拡大していくという仕事にとても魅力を感じたんです。
日高村に行きたいと思ったので問い合わせをして、当時日高村役場の地域おこし協力隊担当だった安岡さんとオンラインで相談させていただきました。
自分がお問い合わせをした経緯や、今までのことをお話したら安岡さんに「地域おこし協力隊を卒業する3年後は何がしたいの?」と聞かれたんです。英語を生かしたいというのと同じくらい、将来的にはIT系の仕事をしたいという気持ちがあったので「卒業後はドローンを自分で使って起業をしたい」というお話をしました。
「それだったら、ひだか和紙に所属して活動するよりも、地域おこし協力隊の3年間で起業に向けて準備ができた方がいいんじゃないか」と言ってくださって。自治体が決めたミッションを元に活動するのではなく、協力隊側からミッションを提案をして活動ができるフリーミッション型の協力隊を安岡さんに勧めてもらったんです。
自分次第で大好きな英語もドローンも使った活動もでき、ここまで自由度が高い自治体は他になくて、自分に合っているなと思ったので日高村に決めました。
Q:実際に日高村に来てからはどのような活動を行いましたか?
A:プログラミングやドローンを身近に思ってもらえる活動を。
日高村にきて、最初に行った活動は、小学生親子向けのドローンを使ったプログラミング教室です。
ドローンって子どもにも大人にも、まだまだそこまで馴染みがないと思うので、ドローンをもっと身近に感じてもらいたいというのと、自分が日高村に来て何をしているのか知ってもらいたいなという気持ちがあったんです。
あと、1番は自分と同じようにドローンが好きな人を増やしたいなと思いました。今、自分がこうやってプログラミングやドローンやプログラミングにハマってるのは、子どもの頃に祖父からパソコンをお下がりにもらったのが始まりだったなと思うんです。だから、自分も誰かにとって“ハマる”きっかけになればいいなと。
プログラミング教室では全くプログラミングに馴染みがない親子のみなさんに参加していただいたので、まずは楽しみながらプログラミングの考え方を知ってもらうために「Scratch」というプログラミング言語を使用しました。コードをかけなくても、指示が書かれたブロックを組み合わせるだけでプログラミングができ、ドローンに指示を出して飛ばすことができるんです。
自分が頭の中で思っている通りに飛ばすためにプログラミングして、上手くいかなかったら修正をして、もう一度飛ばしてみるみたいな経験は、初めての子どもがほとんどだったので、夢中になって楽しんでもらえた様子でした。
Q:これからはどのような活動をしていく予定ですか?
A:ドローンを使った物流サービスの実現に向けての実験。
ドローンを使った物流サービスで日高村のインフラを担えたらいいなと思って、日高村での活動を始めたのですが、今とても大きな壁にぶち当たっています。
今のドローンの技術で運べるのは10kgのもので、1度の飛行時間は30分程度。
そのため、配達できる範囲も限られてしまうんです。着陸するための場所も、まだそこまでピンポイントに指定ができないので、ある程度広い場所が必要なんです。都会に比べると、日高村は庭などがある家も多いので、向いているとは思うのですが…まだまだ、現実的に考えた時にかなり難しいなと。実際、現時点では世界のどこもドローンによる物流がサービスとして成功しているところはないんです。
今はとにかくプログラミングの勉強をしたり、ドローンの最新の技術の情報を集めるために、東京や神戸などいろんなところの展示会に行き、それらの技術を日高村で活用するにはどうすればいいかを考えています。
最近新しく考え始めたのは、薬をドローンで届けるサービス。薬は軽くドローンで運ぶのに適しているのに加えて、薬は定期的に届ける必要がある。それに毎回病院に通うのが難しくなっている高齢者の方もいるので、需要があるのではと思ったんです。
来年には今まで集めた情報をもとに実証実験を行い、コストがどれくらいのかかるか、GPSで指定したところにどれくらい正確に届けることができるのか、日高村全域を網羅するためには離陸場所はどれくらい必要なのか、検討する予定です。
ドローンを使った物流の実現に向けて、少しずつ模索していきます。
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