【2025年スパ関】地域と地球の再生インフラをつくる。ビジョン実装のプロ・シオタさんとの壁打ちレポート
2026.03.09
2023年7月から高知県日高村で始まった「スーパー関係人口創出メンター制度(通称:スパ関制度)」とは、地域課題解決に必要な 「ナレッジ」や「スキル」や「つながり」を持つ県外在住のプロフェッショナルな方に関わってもらい、地域おこし協力隊の事業を支援してもらう仕組み。
その仕組みを利用して学びを促進する『実践型・ワークショップ会』をスタートしました。
多数の企業のブランディングや新規事業開発・サービス開発に携わっているビジョン実装のプロのシオタアツシさんの講座では、ひだか林業を立ち上げた地域おこし協力隊OBの小川さんの事業を題材に壁打ちを行いました。実際に講座を受け、事業にどのような変化があったのか、小川さんのレポートを紹介します。

林業との出会い
こんにちは。
元日高村地域おこし協力隊員の小川稔です。
もともとは東京暮らし。地域おこし協力隊員として高知県日高村に移住してきたのが、私と林業の出会いでした。
林業の経験はゼロ、しかも林業会社も組合もない村への挑戦。「本当に大丈夫かな」という不安と、「面白そうだ」というワクワクが入り混じったまま、それでも飛び込んでみました。今思えば、あのドキドキが全ての出発点だったと思います。

それから地道に人工林の間伐を続け、気づけば林業家として日高村の山と向き合う日々が当たり前になっていました。
日高村は、人口約5,000人弱の小さな村です。豊かな山林に囲まれながら、その恵みを十分に活かしきれていない現実がある。そういう地域の課題を、私はずっと目の前で見てきました。

なかでも力を入れているのが、「山仙プール式炭化炉」を使った粉炭(バイオ炭)の製造です。
化石燃料を一切使わずに多様な有機物を高品質な炭へと変えられるこの技術には、農業用肥料から環境浄化まで、まだ誰も掘り切れていない可能性が眠っていると感じています。
抱えていた葛藤
ワークショップを受ける前、私は大きな壁にぶつかっていました。「粉炭」や「炭化炉」という言葉は、どうしても一般の方にはイメージしにくい。
どんなに優れた技術でも、具体性に欠けるビジョンは外からは見えません。「見えないものは広がらない」というそのもどかしさの中で、理念がだんだん薄っぺらになっていくような怖さも感じていました。
資金調達の場でも、行政との対話の場でも、「粉炭って?何に使えるの?」という問いの連続に、技術への自信はあるが、それを言葉に変える力が足りていなかったのです。
「粉炭は日高村を、世の中をどう変えていくのか」。その問いに、ちゃんと言葉で答えられていなかったのです。
言語化の基礎から学ぶ
シオタアツシさんによる講座は、経営理論の講義というより、「言葉の強度」を実際に手を動かして磨いていくものでした。
印象的だったのは、「I LOVE YOU を自分らしく翻訳する」というワークです。「誰のために、どうしたいか」、そういう「意志」が乗って初めて、言葉は自分のものになる。そのことを体感として学びました。
また、Mission・Vision・Value・Purposeを整理する「理念体系の言語化フレーム」を使い、パタゴニアやスノーピークなどの事例を参考にしながら、自社の構造を改めて解剖しました。
他社の事例を見ながら「なぜこの言葉でなければいけないのか」を考える時間は、自分たちの事業を外から眺め直す貴重な機会でもありました。
最後には、チームやAIと一緒に「ひだか林業」の理念を言語化するグループワークに挑みました。
講座を受けて変わったこと
最大の変化は、理念の位置づけが変わったことです。
これまでは「炭を作って売る」というプロダクト視点が中心でした。でも今は、私たちは「山と人の仲介者」なんだという感覚があります。ワークショップを通じて、そこに気づかされました。
セッションで提示された「たたき台」では、ひだか林業を「地域と地球の再生インフラ」と定義し、バイオチャコールを通じて地域の自然と暮らしを再生する「木の駅(CARBON CYCLE STATION)」をつくるという未来像が描かれました。読んだとき、素直にワクワクしました。
言葉に強度が生まれると、事業の広がりが自分でもはっきりと見えてくるというそんな体験でした。
日本中に再生可能な村を増やす
これからは、言語化したビジョンを実際に社会へ実装していくフェーズです。
日高村の"木の駅"を、すべての村を再生可能にする「CARBON CYCLE STATION」のモデルケースとして確立し、日本中、そして世界の地域課題を解決する存在へ、その決意は、ワークショップを経てより確かなものになりました。
まずは足元の日高村から。でも、視線の先はいつも地球全体に向けていたいと思っています。

2026.02.18