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【地域おこし協力隊卒業記】スコットランドから家族で移住し、クラフトビール醸造所を立ち上げ。2人で目指す醸造所の姿。

高知県日高村出身、村内の外国人労働者に向けた日本語教育をミッションに日高村の地域おこし協力隊に着任したケルビー咲野さん。パートナーのスコットランド人のジョンさんも、フリーミッション型で協力隊として着任し、クラフトビール醸造所のオープンを目指し、二人三脚で活動していました。

3年間の日高村での活動を終え、何を学びどういう生活をしてきたのか活動を振り返りながら、今後の展望も伺いました。


Q:協力隊での3年間を振返ってどうですか?

長いようであっという間の3年間でした。
移住したのが、二人目の子どもが生まれてくるタイミングだったし、ビールの醸造所も新しいことだし、日本語教師もネットワークがないところからだし、ゼロからがいっぱい。
もう一回、あの時と同じことをやれるかといったらやれないと思います(笑)。それくらい大変でしたね。

新たな事業(ビールの醸造所)を始める場合は、協力隊での活動前に、たたき台となるプランニングがいかにできているかが大事だと思いました。

私たちは資金面のことや、見積りを取るとか、事業計画を書くとか、どれくらいのお金がかかるかもわからずに「ビールやりたいです」と移住してきました。

3年間は思っているよりも本当に短いので、夢が大きい人ほど来る前から、たたき台になる計画は必要だなと思いました。


Q:日高村の地域おこし協力隊でよかったことはありますか?

活動がやりたい事に直結していて、生活も安定することにとても助けられました。
小さい子どもがいる移住者、外国からの移住者にも活用しやすい制度でした。

自分は移住してもどうにかなるだろうと思いましたが、特にジョンにとっては、お給料をもらいながら活動できること、活動がやりたいことに直結しているのが大きかったです。

jon_01.jpg(仁淀川町Mukai Craft Brewingでの研修の様子)

言語とか文化のハードルがあり、自分のやりたい夢があるなかで協力隊制度があることで、どれも諦めずにできた。
週に4日の活動というもの助かりました。私は子育てもあったし、フレキシブルに仕事できなかったら、ストレスがもっとあったと思います。


あともう一つ、協力隊の2年目の時に始まったスパ関*の講座を受けられたことは、とても大きかったです。

当初、日本語教室もやりながら二足の草鞋でやっていたのですが、このままでは無理だと感じて。3年目からはジョンだけでなく、私も完全にビールの立ち上げに注力するようになってから真剣に向き合うことができました。

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Q:実際にスパ関でどのようなことを学びましたか?
「誰を喜ばせたいか?ゴールに最短の距離でいかに行くか?」という考えたこともない視座をもらえました。
ひとまずやってみようという感覚からの脱却です。

当初は、ジョンが仁淀川町のMukai Craft Brewingさんで研修させてもらい、私が彼から醸造所の仕事内容を聞いて、それをどのように再現するかを考えていました。

jon_02.jpg(仁淀川町Mukai Craft Brewingでの研修の様子)

自分達らしさみたいなことは考えてなくて、「スコットランドから移住をしてきた私たちが日高村でクラフトビールやればそれでもうユニークだろう」くらいに考えていました。
場所や想いの違いをどう商品にのせるか考えられてなかった。

なんとかなるだろう精神だけでは事業計画は書けないし、それがなければもちろん事業に必要なお金も貸してもらえない。
「誰を喜ばせるために、どんなビールをつくるのか」。
みんなに問うてもらうことで、考えることができました。

そんな議論の中で、ジョンのルーツであり、私たちが住んでいたスコットランドにゆかりのあるビールをやるという方向性も見えてきました。

スコットランドスタイルのビールはとてもニッチです。いろんなクラフトビールがあるのが醍醐味で面白いのに、一見それと相反するようなスタイルに限定してよいのか? ニッチなところを狙うのは上手くいけばいいけど、上手くいく保証もない……。

スコットランドビールに絞るのはすごく勇気がいり、いろいろと葛藤もありましたが、「スコットランド人が作る本場のスコティッシュビールを小さな村の日高村で飲める」というのは、とても強みになると気が付くことができました。

これは協力隊の仲間や、スパ関のメンターの皆さんのおかげです。

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*「スーパー関係人口創出メンター制度(通称:スパ関制度)」:地域課題解決に必要な 「ナレッジ」や「スキル」や「つながり」を持つ県外在住のプロフェッショナルな方に関わってもらい、地域おこし協力隊の事業を支援してもらう仕組み。
詳細はこちらから>


Q:日高村で活動をする中で思った通りにいかなかったこと、変更せざるを得なかったことはありますか?

醸造タンクの大きさを当初の考えより小さくしました。
お店にいっぱい人がきてくれたら量も売れるし、ビールをいい状態で届けられるが、それには立地が関わってくる。

高知県民は、お酒は好きだけど、価格帯が高いクラフトビールを買う文化がないこと、主な交通手段は車であり、高知市内に飲みに行く傾向があること。

実際に日高村に住んで、調査をしていく中で、高知の人の生活様式やお金の使い方がわかってきました。
いろいろ話し合って、最終的には資金調達の目途がつく規模も鑑みて醸造タンクの大きさを決めました。

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あと実は醸造所を建てる場所を探すのが大変でしたね。全然見つからず、日高村内での開業を諦めて村外で探した時期もあったんです。

でも、移住して2年経ったころにジョンが散歩していたとき、近所の人から「ジョンさんビールはまだかえ?」って声をかけてもらったんです。

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暮らす中でジョンも日高村への愛着が湧いてきた時期だったので、やっぱり日高村でやりたいと思うようになり、再び村内で物件を探しました。

最初に1年目から計画があったほうがいいと言いましたが、やっぱりやってみないと分からないことはたくさんあるし、生活に慣れるのにも、その地域への愛着を育てるのにも時間がかかる。来る前の計画は変わるものだと思っていたほうがいいかもしれません。

Q:どんな醸造所にしたいですか?

ジョンはビールしか造れない男と呼んでも過言ではないくらい、おいしいビールを造るのは間違いない(笑)。
その腕だけは信じています。だからいいビールを提供するのは当たり前。

その上で、ビールがハブとなって日高村と繋がる人が増えたらいいなと思います。ビール好き、日高村好き、海外にルーツを持つ人同士の繋がりとか。そこで私もワイワイおいしいビールを飲みながら、いろんなコミュニティーと繋がりたいです。

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Q:咲野さんの今後の目標は何ですか?
村内だけでなく県外や海外でも販売することです。すでに県外でのスコティッシュパブやブリティッシュパブ、クラフトビール専門パブなどでの販売も予定しています。

そしていつかはスコットランドに私たちのクラフトビールを持って帰りたいです。ジョンも自分の地元への誇りを持つことができるし、子どもたちにも日本とスコットランドのルーツを感じてもらいたいと思っています。

あと自分自身も人と話すのが好きだから、ビールをもって、繋がりにいきたいですね。


Q:ジョンさんのこれからの目標も教えてください。

クラフトビールのマスターブルワーになりたいです。
四国、国内の有名な醸造所になって、スコットランドの魅力を伝えたい。そしてお客さんと一緒に飲みたい。
私にとってビールは、コミュニケーションツール。自分のルーツを表すものであり、人とコミュニケーションするために必要なものだと思います。

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Q:最後にこれからパブに来てくれる人に伝えたいことはありますか?

前から知っちゅう友達みたいに、一緒にワイワイしましょう。
スコティッシュビール片手に、日高村で待ちよるきね。

地域の活動日誌

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